日本消化器内視鏡学会雑誌
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偽膜性大腸炎の2例
鈴木 重雄西塚 陽子田中 正人春田 和廣市川 正章中沢 三郎
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1980 年 22 巻 11 号 p. 1592-1596_1

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抄録
抗生物質に起因する偽膜性大腸炎の2例を報告した.第1例は69歳の女性で基礎疾患に再生不良性貧血・ヘモジデローシスを有し,経過中に敗血症を併発したため,CB-PC159/dayとCEZ 3g/eayを使用したところ,水様下痢・腹痛が出現した.大腸内視鏡像では半球状の黄白色隆起がびまん性にみられ,ことに直腸では偽膜は融合し,全周性に直腸内膜を被い,口側に比し著明な変化を呈していた.注腸X線像では直腸から横行結腸にかけて小円形透亮像がびまん性にみられた.第2例は14歳の女性で急性骨髄性白血病にて入院,化学療法を施行,同時にCEZ99/dayを使用中に血性下痢・腹痛にて発症した.大腸内視鏡像・注腸X線像ともに第1例とほぼ同様な所見を呈した.第1例,第2例ともに抗生物質を止めると同時にステロイド・ゲンタマィシン・生理的食塩水の注腸をくり返し行なったところ,症状および大腸内視鏡像とも改善を認め,20~30日で治癒した. 抗生物質の使用中に腹部症状が出現した場合には常に本症の存在を考慮し,早期に対処していくことが重要である.本症の診断に際しては大腸内視鏡所見が極めて特徴的であり,また病変が肛門側ほど強い変化を示すことより,下部大腸ことに直腸の内視鏡検査が極めて有力であると考えられる.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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