抄録
腸管嚢腫様気腫は比較的稀な疾患である.我々は強皮症に合併し,腹腔鏡にて確診しえた症例を経験したので報告する.症例は47歳の女性で全身倦怠感,食思不振を主訴として入院した.胸部X線で横隔膜下に遊離ガスを認めるも腹痛,発熱,筋性防禦,白血球増多などの腸管穿孔症例を欠き,小腸造影にて弛緩拡張した回腸に,表面平滑なほぼ球形のポリープ様病変を散在性に多数認めたため本症を疑った.つづいて腹腔鏡検査を施行し,小腸の漿膜面に壁のうすい多房性の嚢胞を認めた.さらに嚢胞を穿刺吸引したところ,内容は気体のみで本症の確診がえられ,本症の診断における腹腔鏡検査の有用性が示唆された.また皮膚硬化,レイノー現象,γ-グロブリンの高値,抗核抗体陽性,抗DNA抗体疑陽性,皮膚生検像より強皮症に合併したものと考えられた.