日本消化器内視鏡学会雑誌
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胃潰瘍の治癒過程と時相
洲崎 剛
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1980 年 22 巻 5 号 p. 607-621

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抄録

胃潰瘍の治癒過程と時相を明確にするために治癒の開始時期を推定し,これを基準として病像の考察を行った.又大きさの測定により治癒曲線を作成し,又再生粘膜の成長成熟に関しては実体顕微鏡所見を参考とした.その結果出血による褐色苔は週1間以内,浮腫性隆起は2週間以内に消褪する.又再生粘膜による紅暈は浅い潰瘍で3週後,普通は4週後,深い潰瘍で6週後に発現する.以上を参考として時相を分類した.Aa=発症より治癒開始まで,A1=治癒開始より浮腫性隆起の消褪まで,A2=A1とH1の間,H1=再生紅暈の発現よりH2まで,H2=紅暈の幅が潰瘍の半径の1/2以上の広い場合.この時相分類と治癒曲線を基として治癒過程を治癒までの期間により4種に分類した.(1)早期治癒群(1ヵ月以内)(2)正常治癒群(1ヵ月より2カ月まで),(3)遷延治癒群(2ヵ月より4ヵ月まで)(4)狭義の難治群(4ヵ月後も治癒しない).各過程に時相の期間を推定した.(3)及び(4)が所謂難治性潰瘍に相当し,X線写真上5mm以上の深い潰瘍である.

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