抄録
アルコール多飲が原因と思われる肝障害15例を対象として,腹腔鏡検査と直視下肝生検を実施し,臨床血液生化学検査,各症例の総飲酒量および1日平均飲酒量との関係について検討した.1日平均飲酒量からA群(1日平均アルコール量として68gから113g,7例)とB群(113g以上,8例)に分け,その特徴的臨床所見を解析した.腹腔鏡による肝表面像の観察では,A群で斑紋様所見と線維の増生を示す症例が2例(29%),またB群で結節肝が5例(63%)認められた.組織学的所見では,A群で肝硬変3例(43%)及び小葉改築を示す線維増生2例(29%)が,B群で肝硬変6例(75%)が認められた.総飲酒量がアルコールとして1 tonをこえる大酒家は15例中6例にみられ,そのうち5例は肝硬変であった(A群1例,B群4例).比較的長期の禁酒期間の後に腹腔鏡検査を施行したためか,急性アルコール性肝炎や脂肪肝は,それぞれ1例つつであった.