抄録
症例は74歳男性.9年前に食道癌手術を施行.その後下腿浮腫と低:蛋白血症(アルブミン1.8g/dl)を認めて入院.131I-RIBA代謝試験,131I-PVP試験:にて蛋白漏出性胃腸症と診断,リンパ管造影で左側傍大動脈リンパ管の低形成がみられた.拡大内視鏡GIF-HM(最大倍率35倍)を用い十二指腸粘膜を観察した.とくに十二指腸第2部上部の粘膜は白色調を呈し,白色絨毛や散布性白点のほかに著明な発赤を帯びた絨毛がみられた.白色絨毛は十二指腸に均等に存在せず帯状に集合してみられる部位もあった.拡大像では各絨毛の表面全体が白染しているものや,さらに深部まで白色化している絨毛があった.散布性白点は存在様式により,1孤立型,2集簇型,さらに集簇型は(1)線状・帯状型,(2)島状型,に分類された.白色の程度は濃いものから絨毛内毛細血管が透見できる程うすいものまで様々であった.生検では粘膜固有層は浮腫状で拡張したリンパ管が多数みられた.存在様式や程度に様々の違いを示す白色絨毛や散布性白点,さらに発赤絨毛が脂質吸収障害や蛋白漏出の機序に密接に関与することが示唆された.また拡大内視鏡検査はたんに微細病変の診断のみならず,病態生理学的検索に極めて有効と思われ,今後の積極的使用を強調した.