抄録
消化性潰瘍の動態を酵素活性の面から追求し,LDH,ICD,LDHisoenzymepetternの測定の結果から,胃潰瘍では治癒に向うに従い経時的に病変部辺縁,周辺粘膜とも好気的解糖が盛んになることが確認された.十二指腸潰瘍では,活動期に信本来十二指腸粘膜が有する嫌気的解糖が障害され,治癒に向うに従い元に復する傾向が見られた.ALP,ACPの測定の結果からALP活性は,胃潰瘍では病変部辺縁で経時的減少,周辺粘膜では経時的増加が見られ,十二指腸潰瘍でも周辺粘膜に同様の傾向が見られた.ACP活性は胃潰瘍,十二指腸潰瘍とも治癒過程期に病変部辺縁,周辺粘膜とも最も高い活性が見られた.