抄録
17例の大腸結核症(疑診例7例を含む)について,その臨床像,確定診断法,X線像の検討を行なった. 平均年齢は54歳,男性7名,女性10名である.活動性肺病変を認めたものは2例だけであった.赤沈値,ツベルクリン反応はほとんどの例で亢進を示した. 17例中潰瘍形成を認めたものは12例であった.内視鏡を用いた生検材料の結核菌培養で,抗結核剤未投与例10例中9例(90%)に結核菌を証明した.生検部位は潰瘍辺縁および潰瘍底であり,培養陽性率と潰瘍の形態(大きさ,深さ)との間になんら関連はみられなかった. 一方,生検組織診で1例だげ肉芽腫を認めたが,乾酪性壊死は得られなかった. 活動期の結核性潰瘍底には結核菌が必ず存在し,大腸結核症の確定診断には,生検組織診よりも生検材料の結核菌培養が有効であると考える. また大腸結核X線像についての追跡・検討を行なった. いわゆる「潰瘍瘢痕を伴う萎縮帯」をもたない症例が,確診例10例中3例にみられたが,「潰瘍瘢痕を伴う萎縮帯」所見の有無と全盲腸病変との関係について検討し,大腸結核X線像をABCの3群に分類した.