抄録
若い年代の疾病と考えられている十二指腸潰瘍は,最近では高年齢者においてもその発生がみられている.そこで高年齢者の十二指腸潰瘍は若い年代のそれと臨床面および病態生理の面において相違があるかどうか比較検討し,高年齢者の十二指腸潰瘍の実態を明らかにすることを目的とした.その結果,50歳以上の高年齢者の十二指腸潰瘍は,症状としては疼痛の頻度が比較的に低く,顕出血の頻度が比較的に高かった.また幽門狭窄症状も若年者のものと同様多い傾向がみられた.合併胃潰瘍の頻度も高かった.臨床検査上の点からは,酸分泌能は高年齢者にも拘らず過酸の状態が保たれ,Congo-redpatternもclosed typeが中心でそれを裏づけていた.胃排出機能の亢進の状態は高年齢者において一層強く,再発既往との相関が明らかであった.治療との関係では治癒係数からの検討では高年齢者において治癒遷延の傾向が認められた.