日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
肝癌への60Co照射による放射線胃十二指腸炎の1例
西川 久和林 伸行森瀬 公友恒川 次郎兼城 賢明加藤 義昭
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 23 巻 2 号 p. 327-333

詳細
抄録
放射線照射による消化管粘膜の障害は古くから知られているが,胃粘膜障害の報告は比較的稀である.最:近われわれは肝癌に対する60Co照射後,頑固な出血性胃十二指腸炎を来たし,絶食,IVHにより治癒した症例を経験した.症例は56歳男性で貧血を主訴として入院した.入院3ヵ月前に肝癌と診断され,60Co照射を肝門部に3,960rad受けていた.入院時WBC2,400/mm3,RBC2.17×106/mm3,Hb7.4g/dlであり便潜血は強陽性であった.上部消化管X線検査及び内視鏡検査で胃前庭部と十二指腸球部に限局した出血性びらんと診断した・輸血をくり返したが,食事摂取により胃出血が増加し,短時日で貧血になるため絶食により胃の安静を保ち,出血を抑えIVHを施行したところ,約2ヵ月で出血性ビランは消失し,貧血も改善した.穿孔,狭窄など手術の絶対適応となる合併症のない難治性の放射線胃腸障害に対して絶食IVHが著効を奏した1例である.
著者関連情報
© 社団法人日本消化器内視鏡学会
前の記事 次の記事
feedback
Top