抄録
近年消化器内視鏡検査の進歩によって,内視鏡的ポリペクトミーが急速な勢いで普及しているが,それに伴って,胃や大腸と同様に,十二指腸における隆起性病変に対しても内視鏡的ポリペクトミーが試みられるようになった.今回われわれは,上腹部痛を主訴として来院した患者に,上部消化管X線検査で十二指腸下行脚に隆起性病変を認め,内視鏡的ポリペクトミーにて摘除し得た1例を経験した.摘除した腫瘤は,大きさは26×25×9mmの山田IV型のポリープ,組織学的には腺管腺腫であった. 十二指腸における隆起性病変を内視鏡的にポリペクトミーした症例が本邦においても報告されるようになったので,ポリペクトミーの意義と適応などについても文献的考察を行った.十二指腸においても,胃や大腸と同様に,内視鏡的ポリペクトミーは,完全生検と治療の両面で意義があり,極めて有用で積極的に行っても良いと考えられた.しかし早期癌や粘膜下腫瘍の場合や,合併症,回収の面において,なお幾つかの問題点があることを指摘した.