抄録
吉本の開発した膵実質造影法を施行した症例および通常のERCP症例において膵実質を描出できた91症例を対象として検討をおこなった.91症例のうち,30症例に膵疾患を認めたが,膵癌と他の膵疾患の鑑別において膵実質像単独では困難をきたす症例を多く経験した.また,膵実質像と膵癌摘出標本の病理組織像との対比検討より.膵実質像の描出態度だけでは膵癌の存在および浸潤範囲を確定できないことがわかった.膵実質造影法を施行した症例の検査前後の血清アミラーゼ変化をみたとき,膵疾患の有無を確認したうえで膵実質造影法を施行したほうが良いと考えられた.なお,膵疾患の鑑別においては分枝膵管像の読影が重要であり,今後のERCPにおいて分枝膵管像の高率かつ鮮明な描出が必要であることを指摘した.