日本消化器内視鏡学会雑誌
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多発性に早期癌を合併したと考えられる胃線状潰瘍の1例
柴田 醇藤原 雅親藤井 信赤木 笑入下野 勝俊小林 直弘
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1981 年 23 巻 4 号 p. 580-584

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抄録
65歳の男で,昭和43年に行った胃X線検査で,胃角部の線状潰瘍を指摘された. 以来,昭和55年までに数回の胃X線検査を行い,線状潰瘍と嚢状変形を認めた.昭和55年の胃X線検査でも悪性所見は認めなかった. 内視鏡検査は6回行い,胃角部に線状潰瘍を認め,その小彎において潰瘍は再発を繰返した.昭和55年に行った内視鏡検査により胃角部前壁にIIc病変を認め,生検を行いグループVと診断された. 切除胃肉眼標本では,胃角部に6cm長の線状潰瘍瘢痕を認め,その前壁端に3×3.5cm大のIIc型早期癌を認めた. 組織学的には,線状潰瘍はU1-IVの瘢痕であり,前壁端のIIcはこの瘢痕上にあり,深達度mの申分化型腺管腺癌であった.このIIcと独立して後壁よりの瘢痕上に深達度mの高分化型の微小腺管腺癌を認めた.これらは,多中心性に発生したものと考えた.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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