抄録
内視鏡的逆行性膵胆管造影で狭窄型や閉塞型膵管像をしめし,膵癌と慢性膵炎の鑑別がむっかしい症例も少なくない.このような症例にERCPをガイドとして膵の経皮的吸引細胞診をこころみた. 膵癌4症例では細胞診で癌陽性1例,疑診2例で完全なfalse negativeは1例のみであった.一方,開腹によって慢性膵炎,膵体尾部欠損症など良性疾患と判明した3例は細胞診でもno malignancyであった.すなわちfalse negativeの1例以外は術前に良悪性の診断ができた. 本法はERCPをガイドとするため,鮮明な影像下で穿刺できること,穿刺点が決定しやすいことが利点であり,将来,小膵癌の術前の組織診断にも期待がもたれる.