抄録
症例は48歳,男性.肝硬変及び食道静脈瘤の診断にて,食道離断術,脾摘,胃上部血行遮断術が施行されたが,その後の検査で肝癌の合併が確認された.内視鏡検査で胃ビランのほか,十二指腸下行脚に数個の粘膜下腫瘍様の像を呈する小隆起性病変と,周辺粘膜の強い発赤が認められた.剖検では,同隆起部の粘膜下に米粒大までのtumorが密集しており,門脈幹内の著明な腫瘍塞栓及びその分枝,膵,十二指腸に腫瘍血栓を形成していることが確認された.肺,リンパ節を含めその他の臓器には腫傷の転移は全く認められなかった.肝細胞癌が門脈を逆行性に伝わって十二指腸へ転移したものと考えられた.このような症例は,われわれの調査した範囲では他に見当たらず,極めて稀な転移様式をとった症例と思われた.