抄録
早期胃癌と胃ポリープを合併した十二指腸球部カルチノイドの生検診断例の1例を報告する. 症例は,72歳の男性で,1ヵ月に2Kgの体重減少のため,検査をすすめられた.上部消化管X線および内視鏡検査で,十二指腸球部にやや分葉状で,頂上に小陥凹をもつ山田III型の隆起性病変が認められ,生検でar-gyrophil cell carcinoidと診断された.さらに,胃角上小彎には,不整形のビランが,体下部大彎には表面が発赤した山田IV型の隆起性病変がみられ,生検を加え,低分化型腺癌であるIIc型早期胃癌と炎症性ポリープと診断した.十二指腸球部ならびに胃2/3切除術をうけ,術後の経過は良好である. 本症例は,本邦で42例目の十二指腸カルチノイドにあたり,5例目の生検診断例である.これまで,早期胃癌の合併は3例,胃ポリープの合併は1例が報告されているだけで,両者の合併例は,はじめてである.