抄録
原発性胆汁性肝硬変症(primary biliary cirrhosis以下PBC)16例につき,経時的観察および色素撤布法による肝表面紋理の解析を含めた腹腔鏡検査所見を検討し,その肝表面像と臨床像との関係を調べた.PBCの進展に伴う定型的な肝表面像の変化として,なだらかな起伏(1~3cmの粗大な区域化)→微細な凹凸(0.3~0.5cmの微細な区域化)→胆汁性肝硬変症という移行パターンが考えられた.このうち,なだらかな起伏または色素撤布法による粗大な区域化の所見は比較的早期のPBCの肝表面像として診断的意義があると考えられた.色素撤布法による検討では,なだらかな起伏の谷の部分はPBCの門脈域病変がより密に分布する部位であり,山の部分はそれが疎に分布する部位であった.粗大な区域化はこの谷の部分の線維の増生がより進展した状態と考えられた.非定型的なPBCの肝表面像として,慢性肝炎を思わせる凹凸不平な肝表面像に赤色紋理を伴うもの,発症当初より肝表面平滑なまま,高度の胆汁うっ滞所見を伴い長期にわたって経過するもの,慢性アルコール性肝障害など他の肝疾患が合併したものがみられた.これらの症例ではしばしば腹腔鏡検杏所見のみからはPBCの診断は困難であった.