1983 年 25 巻 10 号 p. 1500-1505_1
ERCPに対する前処置薬としてのグルカゴンの効果を,抗コリン薬であるButropium Bromide (4.0mg静注)を対照として入院患者90名を対象に検討した.胃および十二指腸の蠕動運動や緊張に対しては,グルカゴン0.5mgの静注によりすでに良好な抑制効果がみられ,投与量を1 .0mg,2.0mgと増すに従いその効果も増大した.しかしながら対照群との間に有意差を認めなかった. 副作用の出現頻度のうち,とくに口渇と眼の遠近調節障害に関してはすべてのグルカゴン投与群(0.5mg,1.0mg,2.0mg)の方が,対照群に対して有意にその出現頻度が低かった. 老人患者の増加に伴い,抗コリン薬禁忌の症例が増加の傾向にあり,このような症例に対して,副作用も少なく,胃や十二指腸の蠕動抑制効果も良好なグルカゴンは有用であると思われる.