抄録
Formalinによる腐蝕性胃炎の発病初期の病態をX線および内視鏡で観察し得た1例を報告する.症例は32歳男性.精神安定剤と市販のFormalin原液約10ccを飲み自殺を図ったが,異常に気づいた家族とともに来院.入院の上,全身状態を管理し精神症状の改善を待ってX線および内視鏡にて経過を観察した.第10病日のX線検査では,胃体部から穹隆部にかけての伸展性は不良で,粘膜ヒダの腫大と胃液分泌の増加を認め,穹隆部には粘膜下腫瘍様の隆起性変化を認めた.第11病日の内視鏡検査では,粘膜は浮腫状で著明な発赤と粘膜ヒダの腫大を認め,胃体上部から穹隆部にかけ,ほぼ全周性に線状の白苔の付着を認めた.穹隆部には厚い白苔に被われた隆起性変化を認めた.第19病日になると隆起性変化は消失したが,胃体部に線状の発赤と,その頂部に一致した線状の白苔を認めた.第25病日および第28病日のX線,内視鏡検査では,前述の所見は著明に改善されていた.また経過中,食道には異常所見は認めなかった.