抄録
患者は57歳の男性で,食欲不振,全身倦怠感等の主訴にて来診し,血液生化学検査にてLAP,Al-P,γ-GTPの特異的異常高値を認めたため精査された.低緊張性十二指腸造影にて腫大した乳頭を認め,十二指腸内視鏡検査にて発赤腫大した乳頭と総胆管十二指腸瘻を観察し,ERCPにて総胆管および主膵管の開口部付近に比較的軟かな陰影欠損を認めた.生検にて異型腺管を認めたため(Group IV),非露出腫瘤型乳頭部癌と診断され,膵頭十二指腸切除術が施行された.患者の術後予後は良好である.切除標本の組織学的検索により,本例は共通管より発生したと考えられる早期乳頭部癌であり,腫瘍の大半は腺腫としての性格を呈していたが,開口部付近にはOddi氏筋層への浸潤像を示す異型性の高い癌腫の部分があり,これより胆管肝側および膵管尾側に移るにしたがって異型性の低い腺腫に移行していることが判明した.本例は,腺腫の癌化を示唆する貴重な早期癌であると考え,若干の文献的考察と共に報告した.