日本消化器内視鏡学会雑誌
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大腸における内視鏡的粘膜血流量の測定 第1報
三輪 洋子前田 淳赤上 晃伊藤 弥生川村 雅枝上地 六男勝 健一山内 大三山下 克子横山 泉
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1983 年 25 巻 3 号 p. 421-427

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抄録

 水素ガスクリアランス法により,大腸粘膜の局所血流量を測定した.糖尿病,心疾患,大腸炎の有無(いずれも軽~ 中等症)及び年齢と,大腸粘膜血流の間に相関を認めなかった.大腸の部位別には,左結腸曲は65.1±17.9ml/min/100g(n=7),S状結腸45.5±15.4ml/min/100g(n=17)に比べて有意に高値を示した.便通異常と粘膜血流を対比すると,痙攣性便秘30.1±7.5ml/min/1009,下痢62.36±22.97ml/min/1009となり,正常対照例と便秘,便秘と下痢の間に有意差があった.喫煙,燐酸コデイン負荷によって,S状結腸の粘膜血流は有意に低下を示した.ニトログリセリン舌下により,粘膜血流はS状結腸において投与前の71%に減少,左結腸曲で130%の増加を示し,部位による反応の差がみられた.食事負荷により,ラットで粘膜血流の低下がみられた.以上の負荷の結果により,大腸粘膜血流は,腸管壁の緊張が高まっている状態においては末梢血管の状態よりもむしろ腸管壁の緊張に規制されると考えられた.大腸の生理的機能の解明のために,従来の筋電図,内圧等固有筋層の面からの検討とともに,粘膜血流等粘膜面からの検討も更に必要と考え報告した.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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