1983 年 25 巻 3 号 p. 428-434
消化管疾患における内視鏡診断の特色の一つは粘膜の色調の変化を識別することであるが,従来その診断は内視鏡医の主観に依存していた.一方,内視鏡医の色覚の疲労については全く研究が行われていなかった.このためわれわれは内視鏡診断の客観化を考える時,まずヒトの色覚の疲労の実態を客観的な方法で調べる必要がある.今回われわれは,色覚の退色を定量的に測定して,観察終了後よりもその後の回復期の1 ,2分値の色覚の退色が増大すること,この色覚の退色を少なくするのには,補色のフィルターを使用すると有効であること,また1回3分間内視鏡観察をした後1分間休憩というパターンで10回内視鏡観察をした後の色覚の退色は,非疲労時よりも22%進んでいること,また回復に先立って補色を見せても,回復過程は対象群の回復とほとんど変らないこと,また異なる照度条件(100, 500, 1 , 000Lux)での色覚の退色を調べ,ほぼ同じ傾向の退色を示すこと等の成績を得た