日本消化器内視鏡学会雑誌
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食道狭窄を初発症状とした肺oat cell carcinomaの1剖検例
幸田 弘信石川 裕司佐藤 仁志柴田 好武藤 英二武田 章三原田 一道水島 和雄上田 則行並木 正義
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1983 年 25 巻 3 号 p. 442-447_1

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抄録

 肺癌・特に未分化癌は,時として特異な進展を示すことがある.今回,われわれは,嚥下障害を初発症状として来院し,あたかも後縦隔腫瘍の食道への圧迫,浸潤を思わせた縦隔型肺癌の1例を経験したので報告する.症例は,72歳の男.嚥下困難を主訴として来院,食道のX線検査で中部食道に壁外性の圧迫像を認めた.食道内視鏡検査では,狭窄が主な所見で,一部に癌の浸潤を思わす粗造な粘膜所見がみられたのでbiopsyを行った.その組織像で明らかな腫瘍細胞を認めたが,確定診断は困難であった.CT scanで後縦隔にsoft tissue density mass を認め,食道は圧排されていた.以上より悪性縦隔腫瘍を考えたが,剖検では,右肺S6末梢,縦隔側原発のoat Cell Carcinomaであった.本症例のように嚥下障害を初発症状とし,他に肺癌といえる所見がないものは,非常 にまれである.さらに,食道内視鏡検査が確定診断に近づくために有用であったことは ,重要なことと思われた.

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