日本消化器内視鏡学会雑誌
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十二指腸球後部潰瘍でSmall Pyloric Areaを呈した一症例
上西 紀夫山本 修渡辺 千春金子 幸二大原 毅近藤 芳夫庄司 文久
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1983 年 25 巻 3 号 p. 471-476_1

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抄録

 最近,十二指腸潰瘍に対する選近迷切術の立場から,胃底腺領域の拡大,幽門腺領域の縮小を示し,不完全迷切の原因となるsmall pyloric areaの存在が注目されて来ている. われわれは,典型的な十二指腸球後部潰瘍で,small pyloric areaであった症例を経験した. 症例は54歳男性で,心窩部痛・下血を主訴に当科に入院した.上部消化管透視,内視鏡検査にて,球部潰瘍瘢痕と十二指腸下行脚の球後部潰瘍を認めた.胃内外分泌機能検査にて,胃液酸度高値と,血中ガストリン値底値を認めた.手術術式としては,十二指腸下行脚の狭窄著明なため,選迷切兼幽切術を施行した.切除胃の組織学的検索にて,よく発達した胃底腺領域が幽門洞部の中ほどまで拡大しており,一方,幽門腺領域は縮小し,幽門輪より3cm以内の範囲に限局し,small pyloric areaの症例と判明した. そして,small pyloric area=壁細胞の数の増加→ 胃液酸度高値→ 球後部潰瘍発症の可能性が示唆された.このような症例に対する手術術式としては,選迷切兼幽切術をすべきであり,選近迷切術は不適当と考える.

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