抄録
患者は16歳の女性で,右季肋部痛を主訴に受診した.上部消化管造影では,十二指腸球後部より上行部まで辺縁は不整で一部に小棘状突出像がみられ,粘膜ひだの巾は8mmと肥厚し,その粘膜ひだに結節状の隆起が多数認められ,同時に膵管が乳頭部よりbariumで造影された.内視鏡検査では,十二指腸内腔にはやや退色した大小不同の小隆起が多数認められ,肥厚した十二指腸ひだの上にまでその変化がおよんでいた.しかし,その生検組織像は,間質の軽い炎症細胞の浸潤をみるのみであった.本症例は,1歳時より気管支炎,肺炎をくり返しており,胸部X線像で全肺野に小斑状,粒状影が認められ,発汗試験においてNa,Clが高値を示し,口唇の小唾液腺生検組織で,腺腔の拡張と粘液の停滞を認めたことよりcysticfibrosisと診断した.cysticfibrosisは,本邦ではきわめてまれな疾患であり,そのほとんどがmeconiumileusのため乳児期に死亡しており,長期生存例の報告はないが,本症例は十二指腸粘膜に特異な変化を示したcysticfibrosisの長期生存例である.