日本消化器内視鏡学会雑誌
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肝疾患に合併した十二指腸炎の検討
田中 雄二郎吉田 秀三伊藤 慎芳北村 明土谷 春仁桜井 幸弘船冨 享池上 文詔多賀須 幸男
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1984 年 26 巻 11 号 p. 1924-1931

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抄録
われわれは,昭和83年1月から昭和87年12月までにオリンパス社製GIF-P2およびP3を用いて延べ15 ,468回の上部消化管内視鏡検査を行った.この中で球部の1/2以上の範囲に発赤腫張,びらん,ないしたこいぼ型びらんを認め,かつ十二指腸潰瘍を合併しない症例を十二指腸炎とした.同期間に診断された十二指腸炎は69例であり,内22例が肝疾患に合併していることが注目された.このうち従来から十二指腸炎の病因としてあげられたことがある種々の因子がすべて見当らない症例は11例であった.肝疾患に十二指腸炎が合併する比率2.09%は,肝疾患を有さない例で十二指腸炎が出現する比率約0.42%に比し有意に高値であった.上記11例に合併した肝疾患の内訳は,急性肝炎3例,慢性肝炎4例,肝硬変1例,薬剤性肝障害2例および体質性黄疸1例であり,内8例で急激な肝機能の増悪時に検査が行われていた.また,急性肝炎例で肝機能の改善に伴って十二指腸炎の軽快するのを確めえた症例がある.これらより,肝疾患殊に急激な肝機能の悪化は,十二指腸炎の原因となりうると考えられた.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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