日本消化器内視鏡学会雑誌
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類天疱瘡に伴った表層性食道粘膜剥離症の1例
豊原 時秋望月 福治藤田 直孝李 茂基伊東 正一郎池田 卓大久保 俊治中嶋 和幸
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1984 年 26 巻 11 号 p. 1942-1946_1

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抄録
類天疱瘡が,内的要因と思われる極めてまれな表層性食道粘膜剥離症の1例を経験し,免疫抑制剤の治療前と治療後の食道粘膜の剥離状態を内視鏡検査で経過観察し得たので報告した.症例は,45歳の女性で,悪心に引き続いて少量の新鮮血と共に白色の紐様構造物を嘔吐し入院した.食道内視鏡検査で,門歯列より約33cmの肛門側に,全周性の境界明瞭な発赤面を伴う粘膜欠損像を認め,その口側は正常粘膜像を示していた.正常粘膜の部分を生検鉗子で牽引すると,薄い膜状に粘膜が剥離され,剥離後の粘膜欠損部には境界明瞭な発赤面を生じた.食道粘膜の電顕的検索で類天疱瘡と診断し,Predonine30mgとEndoxan50mg連日投与の経過観察中に,直視下に生検鉗子で食道粘膜を牽引しても膜状の剥離現象は認められなくなり,免疫抑制剤が著効したと考えられた.表層性食道粘膜剥離症の要因として,本症のような天疱瘡群に基づく食道粘膜病変もあることを銘記すべきと考えられた.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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