日本消化器内視鏡学会雑誌
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食道色素内視鏡検査のため撤布したルゴール液が原因で発生したと考えられる急性食道ビラン,胃潰瘍の2症例
加藤 文人松浦 昭吉井 由利春日井 達造田中 康之加藤 孝治
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1984 年 26 巻 12 号 p. 2408-2415

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抄録
 食道色素内視鏡検査のため撤布したルゴール液によって発生したと考えられる急性食道ビラン,胃潰瘍の2症例を経験した. 症例1は59歳男性で,食道癌精査のためルゴール液撤布内視鏡検査(以下ル法内視鏡)を施行したところ,検査直後より強度の上腹部痛を訴え,3日後の内視鏡検査で,食道の帯状ビランおよび胃噴門直下後壁から大彎にまたがる著しく厚い白苔を有する潰瘍を認めた.抗潰瘍治療で2カ月後,線状瘢痕となって治癒した. 症例2は61歳男性で,食道癌精査のためル法内視鏡を施行したところ,検査直後より嘔気および強度の上腹部痛を訴え,その後吐下血をきたした.薬物治療で止血せず,翌日の内視鏡検査で食道のビランと胃噴門直下に数条の線状潰瘍を認め,同部より動脈性出血が認められたため,レーザーで止血を図った.6日後食道癌の分割手術にて摘出された胃には,噴門より放射状に走る7条の線状潰瘍を認めた. ル法内視鏡に際し,十分注意すべき合併症と考えられたので,ここに報告するとともに留意点,対策について述べた.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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