1984 年 26 巻 3 号 p. 414-423
食道癌および噴門部癌の手術適応外患者の癌性狭窄に対するplastic prosthesisによる内視鏡的治療法の有用性と安全性について基礎的検討を行なった. 雄家兎36頭の食道にVX2癌を内視鏡直視下に移植して癌性狭窄を作製し,%周性以上の狭窄をきたした時点でplastic tubeを挿入した11頭(tube(+)群)と,plastictubeを挿入しなかった10頭(tube(-)群)とで,その食餌摂取量,体重の変化,生存日数を対比した. tube(+)群の方が,tube(-)群より,食餌摂取量は多く,両群の間に1%以下の危険率で有意差を認めた.体重の変化,生存日数では,両群の間に有意差は認められなかった.また,plastic tubeによって,食道破裂(9.1%),圧迫壊死(18.2%),tubeの内腔閉塞(9.1%),tubeの移動(18.2%)等の合併症が認められた. 以上より,癌性狭窄に対するplastic prosthesisによる内視鏡的治療法は,合併症の克服という課題はあるが,物を食べる歓びと,社会生活を患者に与えることができると考えられた.