日本消化器内視鏡学会雑誌
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上部消化管出血に対するcimetidine静注と局所用トロンビン直視下散布の併用止血効果
渡部 和彦三浦 邦彦川崎 寛中門原 三志男中山 健二山本 貞寿佐々木 宏之鶴原 一郎古城 治彦吉田 勝彦富江 一夫
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1984 年 26 巻 8 号 p. 1301-1308_1

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抄録

 急性上部消化管出血に対する局所用トロンビン直視下散布の止血効果を検討する目的でH2-receptoranta-gonistまたは制酸剤を主体とした基礎治療群32例,これにH2-receptorantagonistの経静脈性投与下にトロンビンを散布したトロンビン群30例計62例における止血成績を対比検討した.両群間で平均年齢,末血血色素値,輸血量,出血より内視までの期間,出血の重症度,出血の様式に有意差を認めなかった.しかし後者で血管露出例が多かった. 各治療別の止血有効率は基礎治療群で69%,トロンビン群で80%の結果であった.出血状況即ち軽度,中等症出血,血管露出,非露出,湧出型出血における止血有効率はいずれもトロンビン群で高い止血有効率が得られた.以上より,中等症以下の出血で血管露出がなく湧出型の出血例に対しては局所用トロンビン直視下散布が治療上有用と考えられた。

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