日本消化器内視鏡学会雑誌
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食道異物の内視鏡的摘出後大量吐血死をきたした大動脈食道瘻の1例
斉藤 裕輔峯本 博正真口 宏介折居 裕奥村 利勝成沢 恒男小西 行夫岡村 毅与志横田 欽一並木 正義
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1986 年 28 巻 10 号 p. 2318-2324_1

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抄録
 患者は56歳の男性で,マガレイを食べた直後より嚥下時の前胸部痛が出現,翌日当科を受診した.初診時の血液検査で白血球増多とCRP陽性を示したが,胸部X線検査では異常所見はみられなかった.食道内視鏡検査で門歯より30cmの8時方向に長径約5cmの魚の骨が刺さっているのを認め,これを生検鉗子で摘出した.それから2週間後に再び強い前胸部痛と少量の新鮮血の吐血をみたため入院した.その時の心電図には心筋梗塞を思わせる所見はなかった.入院の翌朝大量の新鮮血を吐血し死亡した.剖検の結果,魚の骨の刺入部位に一致して食道穿孔と縦隔膿瘍がみられ,aorto-esophageal fistulaが形成されていた.結局動脈性の出血による循環不全と血液誤飲による窒息死と判断された.aorto-esophageal fistulaは極めて稀な疾患であり,食道異物の内視鏡的摘出後に生じたaorto-esophageal fistulaの本邦報告例は,われわれが調べ得た限りでは見当たらない.参考症例として文献的考察を加えて報告した.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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