日本消化器内視鏡学会雑誌
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薬剤性腸炎の検討
―特に内視鏡所見と大腸粘膜の粘液組成の変化について―
島本 史夫岩越 一彦林 勝吉阿部 和夫平田 一郎大柴 三郎正木 秀博西尾 雅行
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1986 年 28 巻 4 号 p. 710-716_1

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抄録
 抗生物質投与後に血性下痢を主訴として発症する薬剤性腸炎に関する報告例は年々増加してきている.著者らは,薬剤性腸炎患者73例について,臨床的,内視鏡的な特徴と共に,その大腸粘膜の粘液組成の変化について検討した.その結果,比較的若い年齢層に多発し,性別では女性に多かった.投与された抗生物質は合成ペニシリン系(特にABPC,AMPC)が最も多かった.内視鏡所見は,主に横行結腸,下行結腸に病変がみられ,その所見は著明な発赤,びらん,浮腫などであった.抗生物質服用開始後平均6。5日目に症状が出現し,全例に血性下痢が認められた.対症療法のみで発症後平均4日目に症状は改善した.病変部の大腸粘膜の粘液組成は正常粘膜と異なりsialomucin優位であった.しかし,所見の改善と共に,正常粘膜とほぼ同じsulphomucin優位のpattemとなった.sialomucinの増加は,炎症の治癒経過に何等かの関連が示唆されるが,その役割はまだ不明であり,炎症による二次的反応と推察された.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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