抄録
食道・胃・S状結腸・肺・骨・リンパ節に転移をきたした血管肉腫の剖検例を経験した.原発巣としては左下顎部の歯肉が考えられた.症例は72歳男性,左下顎痛で発症し,抜歯後該部に易出血性難治性潰瘍が生じた.当院耳鼻科に入院後,高度の貧血の原因検索のため胃の精査を受けた.胃X線写真・胃内視鏡検査により胃体小彎に隆起性病変(Borrmann II型様,約2.5×2cm大)がみられた.入院後50日より血痰・呼吸困難が加わり,81日目に呼吸不全にて死亡した.本症例で生前に歯肉生検・胃生検を行ったが,正診には至らなかった.この原因の検討のために,生検材料・剖検臓器の腫瘍組織を病理組織学的および免疫組織学的に再検索した.本症例では未分化な腫瘍組織が主体であったが,一部に小血管腔を形成し腫瘍細胞内に第VIII因子関連抗原を含む分化した部分もみられた.血管肉腫の消化管転移は稀であるが,胃の転移巣を中心にその肉眼形態を述べ,各種の転移性胃悪性腫瘍の報告例と比較した.