日本消化器内視鏡学会雑誌
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胆道内視鏡下で電気的焼灼による内瘻化に成功した膨大部領域癌の1例
渋谷 裕史福田 定男吉益 均岩崎 至利児島 辰也川口 実吉田 友彦斉藤 利彦芦澤 真六
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1986 年 28 巻 8 号 p. 1883-1887_1

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抄録

 胆道内視鏡下で高周波電気ナイフを用いて行う経皮経肝的内胆汁瘻孔形成術(PTCP)の試みが奏効した1剖検例を,その器具・手技と共に報告する.症例は84歳の女性.黄疸の精査加療のため入院し,経皮経肝的胆道ドレナージ(PTCD)が施行された.各種画像診断法,更に経皮経肝的胆道内視鏡検査および生検の所見より膨大部領域癌と診断したが,poorriskのため切除は不能と判断された.完全閉塞の状態の総胆管末端部に胆道内視鏡下にmitomycinCを数回局注したが奏効せず,PTCPを試みた.PTCP施行直後にAl-P値と血清アミラーゼ値の上昇を認めたが,胆管炎や膵炎の合併を示す臨床症状は見られず,上昇した検査値も短期間に改善した.本症例はPTCP施行8カ月後に悪液質のため死亡したが,この間ビリルビン値の上昇は認められず,胆汁の十二指腸への排泄は終始良好であったと考えられた.更に剖検所見上,形成した瘻孔は充分に開存していた.PTCPは,切除不能の閉塞性黄疸例に対する有用な治療法になり得ると考える.

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