早期ファーター乳頭部癌の2例について報告した.症例1は72歳,男性.心窩部痛を主訴に来院.来院時,胆道系酵素の軽度上昇を認めた.低緊張性十二指腸造影検査,十二指腸内視鏡検査でファーター乳頭部に一致してポリープ様隆起性病変を認めた.生検材料の組織学的診断は腺腫であったが,悪性を否定できず,乳頭部切除術が施行された.切除標本の組織学的診断は腺腫内癌であった.術後の経過は良好である.症例2は53歳,男性.上腹部痛,背部痛を主訴に来院.血清アミラーゼの中等度上昇,及び軽度の肝機能異常を認めた.急性膵炎と診断,保存的治療により症状は軽快した.低緊張性十二指腸造影検査,十二指腸内視鏡検査でファーター乳頭部に一致してポリープ様隆起性病変を認め,生検材料の組織学的診断は腺癌であった.膵頭十二指腸切除術を施行.切除標本の組織学的診断は腺腫内癌であった.術後の経過は良好である. これら2例はいずれも腺腫の一部に癌を併存した症例であり,ファーター乳頭部の腺腫の癌化を示唆するものと考えられ,若干の文献的考察を加え報告した.