日本消化器内視鏡学会雑誌
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早期十二指腸乳頭部癌の2例
佐藤 達之岡野 均西田 博堀口 雄一今村 政之内田 秀一児玉 正瀧野 辰郎園山 輝久弘中 武福田 新一郎山下 滋夫
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1986 年 28 巻 8 号 p. 1902-1909_1

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抄録

 早期ファーター乳頭部癌の2例について報告した.症例1は72歳,男性.心窩部痛を主訴に来院.来院時,胆道系酵素の軽度上昇を認めた.低緊張性十二指腸造影検査,十二指腸内視鏡検査でファーター乳頭部に一致してポリープ様隆起性病変を認めた.生検材料の組織学的診断は腺腫であったが,悪性を否定できず,乳頭部切除術が施行された.切除標本の組織学的診断は腺腫内癌であった.術後の経過は良好である.症例2は53歳,男性.上腹部痛,背部痛を主訴に来院.血清アミラーゼの中等度上昇,及び軽度の肝機能異常を認めた.急性膵炎と診断,保存的治療により症状は軽快した.低緊張性十二指腸造影検査,十二指腸内視鏡検査でファーター乳頭部に一致してポリープ様隆起性病変を認め,生検材料の組織学的診断は腺癌であった.膵頭十二指腸切除術を施行.切除標本の組織学的診断は腺腫内癌であった.術後の経過は良好である. これら2例はいずれも腺腫の一部に癌を併存した症例であり,ファーター乳頭部の腺腫の癌化を示唆するものと考えられ,若干の文献的考察を加え報告した.

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