1986 年 28 巻 8 号 p. 1911-1915_1
クモ膜下出血の術後に消化管出血をきたした,Dieulafoy潰瘍と思われる症例を経験した.この症例の病変は十二指腸にみとめられ,純エタノールの局注が奏効した. 症例は70歳の女性で,痙攣発作,意識障害,右不全麻痺を主訴に入院した.クモ膜下出血の診断の下に左中大脳動脈の動脈瘤頸部にクリッピング術を施行したが,術後9日目にタール便が出現した.翌日の緊急内視鏡検査では,上十二指腸角のやや前壁よりに径約3mm大の赤色の凝血塊と,その後壁よりに1mm大程の小隆起をみとめ,他には特に病巣と思われる部位はみられなかった.小凝血塊部を出血源と判断して純エタノールを計1.0ml局注したところ,止血に成功した.しかし患者は,術後の脳浮腫が悪化したため死亡した.剖検では,病巣部にUl2の潰瘍と,粘膜下層に太い動脈を連続性にみとめた.本疾患が十二指腸に発生したという報告は今だにみないため,特にその発生部位について若干検討を加えた.