日本消化器内視鏡学会雑誌
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術前に診断しえた細小肝癌と早期胃癌の同時性重複の1女性例
高安 博之板倉 勝門阪 利雄牧野 孝史松崎 松平猪口 貞樹佐々木 哲二
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1987 年 29 巻 1 号 p. 157-163

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抄録
 AFP高値が契機となり,腹腔鏡検査が診断に有用であった細小肝癌と早期胃癌の同時性重複例を経験した.症例は70歳の女性で食思不振を主訴に近医を受診し,肝機能障害とAFP高値を指摘されて当院に入院した.検査上,慢性の肝機能障害が認められたほかAFPは333ng/ml,CEAは4.Ong/mlと高値を示し,便潜血反応は陽性であった.腹部超音波,CT,血管造影では腫瘍の同定は困難であったが腹腔鏡検査を施行したところ,硬変肝に加え右葉横隔膜下に径2cm前後の半球状腫瘤を認め,目標生検により肝細胞癌と診断しえた.また胃X線検査及び内視鏡検査を行い,胃幽門前庭部後壁にIIa+IIc型早期胃癌を認めた.以上より,細小肝癌と早期胃癌の同時性重複と診断し肝右葉部分切除,胃亜全摘及びリンパ節郭清術を施行して同時に切除しえた.術後AFP,CEAはともに正常化し良好な経過をたどっている.細小肝癌と早期胃癌の両者を術前に内視鏡的に診断しえた症例は極めて稀であり,女性患者における報告は本邦では本症例が初例である.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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