抄録
実験的肝癌発生過程を腹腔鏡的に観察することは,肝発癌のsequentialな解析に有用である.本研究では,電子内視鏡を用いて発癌過程における肝表面像の変化を詳細に観察するとともに,ICG(7.5mg/kg)静注前・後の色調変動についても検討を加えた.また,画像処理装置(TOSPIX-II)を用いてRGB色空間,HSI色立体に基づく画像解析を行った. 0.005%diethylnitrosamine投与後,肝表面の血管増生が徐々に著しくなり,12週以降より表面平滑で白色調を呈する過形成性結節(HN)が出現し,15週以降には肝癌(CA)の発生が観察された.ICG投与による腹腔鏡では,HN及びCAの両病巣はともにICGの取り込みを示さなかった.しかし,HSI変調による画像解析において,HNは非病変部とCAとの中間の色調変動を示しており,HNがなお若干のICG取り込み能を有していることが明らかとなった.