1988 年 30 巻 10 号 p. 2287-2293
われわれは,多発性隆起性胃浸潤を呈した,急性リンパ球性白血病(ALL)の2症例を経験した. 症例1は37歳男性.全身関節痛,38℃台の熱発を主訴に入院し,様々な検索を行い,骨髄穿刺で得られた骨髄塗沫標本では,リンパ芽球が91%存在した.その血液学的所見よりALLと診断した.同時に施行した上部消化管内視鏡検査では,胃全域に散在する径3~5mmの山田一福富分類I~II型の隆起性病変を多数認めた.その生検で,骨髄と同様にリンパ芽球の浸潤を確認した. 症例2は64歳女性.全身倦怠感を主訴に入院し,症例1と同様に骨髄生検標本で82%のリンパ芽球が存在した.その血液学的所見よりALLと診断した.同時に施行した上部消化管内視鏡検査で,胃体部に中心陥凹を有する径3~5mmの山田一福富分類I~II型の隆起性病変を認めた.その生検で,骨髄と同様にリンパ芽球の浸潤を確認した. 両症例とも化学療法施行後,胃病変は完全に消失した.ALLにおいて,胃浸潤を内視鏡で確認された症例は稀と考え報告する.