日本消化器内視鏡学会雑誌
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臨床的に経過観察し得たDouble pylorusの1例
三浦 義邦
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1988 年 30 巻 10 号 p. 2315-2320_1

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抄録
心窩部痛を主訴に来院した80歳の女性に,胃X線検査を施行したところ,胃幽門前庭部小彎に憩室様の突出像を認め,それは幽門前庭部から十二指腸球部に通じる交通路を有していた.内視鏡検査では,本来の幽門輪とその小彎側にも他に一つの開口部を認め,その奥の十二指腸球部前壁から隔壁にかけて,白苔を有する巨大な潰瘍が存在した.この潰瘍は,本来の幽門輪ともう一方の開口部からも確認でき,いわゆるdouble pylorusと診断した.ピレンゼピンによる治療2カ月後の胃X線検査では,幅の広い幽門輪と前庭部小彎にニッシェ様突出を示し,内視鏡検査では前回みられた隔壁は消失し,幽門輪は大きく拡大し,幽門前庭部に多発性潰瘍を認めた.高齢で心疾患があり,手術による病理組織学的検索はできなかった.既往歴からみると,以前からもしばしば腹痛などの症状があり,潰瘍の縮小と共にdouble pylorusの消失をみた点から,本例の成因は潰瘍の穿通による後天的なものと考えられる.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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