日本消化器内視鏡学会雑誌
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腹腔鏡検査にて治癒経過を観察し得た結核症の2例
芦沢 信雄有馬 範行小畠 敏嗣横山 元裕渡辺 誠平川 弘泰福本 四郎島田 宜浩
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1988 年 30 巻 7 号 p. 1543-1548_1

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抄録
粟粒結核症に随伴した肝結核1例と腹膜結核1例の治癒経過を腹腔鏡検査にて観察し得たので報告する.症例1;68歳男性,.不明熱のため入院経過中,胸部X線検査で両肺野に粟粒陰影が出現した.腹腔鏡検査により,肝表面に無数の微小白斑の散在と,肝生検でラングハンス型巨細胞を伴う類上皮肉芽腫を多数認めた.抗結核剤投与1年後の腹腔鏡再検で,その微小白斑は完全に消失していた.症例2;56歳女性,腹水の原因精査の目的で腹腔鏡検査を施行.多数の白色結節を伴う腹膜の癒着および壁側腹膜の肥厚と結節形成を認めた.壁側腹膜結節部の生検でラングハンス型巨細胞を伴う類上皮肉芽腫を認めた.抗結核剤投与1カ月後に腹水は消失し,2.5カ月後の再検で癒着部の白色結節は減少していたが,壁側腹膜の結節は融合増大傾向をみた.6カ月後に結節は著明に減少し,11カ月後の腹腔鏡検査で完全に消失していた.症例1は喀痰および胃液より,症例2は腹水より結核菌を検出し,症例1が粟粒結核症に随伴した肝結核,症例2が腹膜結核と確定診断し得た.2症例ともそれぞれの結核症の腹腔内における典型的な治癒経過を示していると考えられる.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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