抄録
便秘とストレスが発症に関与したと考えられ,若年成人男性の虚血性大腸炎2例について報告した.症例1は33歳,男性で従来からの便秘に加えて,自宅に籠もりきりでの期限付きの機械設計の仕事が重なった時,発症した.下血直後の内視鏡検査で下行結腸から脾彎曲部にかけ約30cmの範囲に著明な粘膜浮腫とびまん性出血を,注腸造影検査では同部に腸管の伸展不良,壁不整,thumb-printing像を認めた.症例2は23歳の習慣性便秘の男性で,車のセールスで売上げ件数が伸びないというストレスが加わった時,血便と下腹部痛が出現した.内視鏡検査でS状結腸に約5cmにわたる全周性の発赤とびらんを認め,注腸造影で同部の伸展不良が明瞭であった.2例とも対処療法のみで数日後に狭窄を残さずに治癒した.基礎疾患を持たない若年成人男性例は,本邦で自験例を含め5例と稀である.本例は詳細な問診により,便秘とストレスが発症に関与したと推察し得た.