抄録
:無症候性HBウイルスキャリア31例(A群)の腹腔鏡像を無症状B型肝疾患19例(B群)と比較した.A群は男女比5.2:1,平均年齢38.5歳で,B群(18:1,33.1歳)より女性が多く年齢が高かった.A群のe抗原陽性率は35%で,B群(79%)より低かった. 腹腔鏡診断は,A群では白色肝(58%)が最多で,結節肝(10%)も存在したが,B群では斑紋肝(58%)が最多で,結節肝はなかった.A群ではB群より脈管拡大,赤色紋理が少なく,結節形成が多かった. 組織診断は,A群で慢性非活動性肝炎(42%),B群で慢性活動性肝炎(69%)が最も多かった.A群に小葉改築を伴う慢性活動性肝炎や肝硬変が7例(23%)存在し,うち6例は肝障害の既往を有し,e抗原陽性例は1例しかなかった.腹腔鏡像と組織像はよく対応したが,正診を得るために両所見の総合が重要である.血清アデノシンデアミナーゼ活性の測定は病態把握にある程度有用である.e抗体陽性にもかかわらず病態が進展した症例を提示した.