抄録
著者らは今回電子内視鏡において,リアルタイムに色相・彩度強調並びにコントラスト変換が可能なリアルタイムカラーエンハンサーをオリンパス光学の協力を得て開発し,各種消化管疾患の粘膜表面の色情報についてその臨床的意義を検討した.内視鏡診断に当たっては,病変の構造・微妙な色調の差をとらえる事が重要である.従来これらは,検者の長年の経験に頼る部分が多かった所であるが,本装置の導入により,表面構造の変化の少ない病変及び信号量の少ない血管像に関しても,明瞭な色調差を得る事が可能となった.特にIIc型早期胃癌の境界,潰瘍周辺の発赤,静脈瘤の性状・範囲等の診断に有意な成績を得た.今後更に,微妙な色調の変化をより詳細に科学的に分析できる可能性も示唆された.