日本消化器内視鏡学会雑誌
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ERCPが原因で発症したと思われる細菌性心内膜炎の1例
松葉 周三後藤 和夫野口 良樹白木 茂博神谷 泰隆大原 弘隆中山 善秀神谷 武岡山 安孝武内 俊彦
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1989 年 31 巻 5 号 p. 1290-1296

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抄録
 ERCPが原因で発症したと思われる細菌性心内膜炎の1例を経験した.患者は47歳,男性.ERCPおよび諸検査にてアルコール性慢性膵炎(I群)と診断した.ERCP施行後9日目より39℃台の発熱をきたし,心エコーにて僧帽弁後尖に疣贅の付着を認め,血液培養にてStreptococcus faecalisを検出したため,細菌性心内膜炎と診断した.Ampicillinの投与によって治癒を認めた.これまでERCPによって細菌が消化管粘膜または膵管,胆道から血中へ侵入することにより発症すると考えられている一過性の菌血症または敗血症の報告が散見される.本症例は僧帽弁閉鎖不全を合併していたため,ERCPによって発症した菌血症が細菌性心内膜炎に至ったものと思われる.また,著者らはERCP施行直後,28例に血液培養を施行したが全例細菌を認めなかった.諸家らの報告からこの種の菌血症は一過性であることが多く,また弱毒菌であるため臨床上問題となることは少ない.しかし,先天性心疾患,後天性弁膜症,人工弁患者,免疫不全患者などでは細菌性心内膜炎や敗血症が発症しやすく致命的となる可能性が高い.その対策としては検査施行前後にAmpicillinを中心とした抗生剤の予防的投与の必要性が示唆された.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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