日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
Omeprazole投与中にみられた潰瘍底隆起の成因に関する研究
芦田 潔大坂 直文鄭 鳳鉉滝内 比呂也阪口 正博田中 雅也奥村 泰啓浅田 修二平田 一郎大柴 三郎
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 31 巻 7 号 p. 1776-1782_1

詳細
抄録
著者らは,活動期の胃潰瘍患者6例にOmeprazole(20mg/日,朝食後)を投与し2週間毎に内視鏡観察を行ったところ4例に潰瘍底の隆起がみられた.隆起の発現頻度は,H2 blocker投与時よりも著しく高率であった.24時間胃内pH連続測定による検討によると,Omeprazole投与中にはRanitidine投与中よりもpH3以上のholding timeがはるかに長く,また平均pHも高かった.つまり,OmeprazoleではH2 blockerよりも胃内pHの持続的な上昇がみられた.隆起には,表面性状が白色調のものと粘膜模様を有するものの2種類があった.胃生検の結果,前者は好中球,小円形細胞浸潤が著明な肉芽組織であり,後者は一層の再生上皮に被覆された肉芽組織であった.すなわち,両者とも肉芽組織が隆起の原因であり,後者は前者より組織の修復過程が進んだ段階であると考えられた.Omeprazole投与時の潰瘍底隆起の成因も肉芽組織の増生であり,H2 blockerよりも胃液の消化作用の阻止が完全であるために隆起の発現が高率であったものと考えられた.
著者関連情報
© 社団法人日本消化器内視鏡学会
前の記事 次の記事
feedback
Top