抄録
HBVキャリアのnatural courseにおけるHBe抗原抗体系のseroconversionによる肝の変化を形態学的に明らかにする目的で,臨床的に無症状のままHBe抗体を獲得し,さらに組織学的にも肝炎所見をもたないHBe抗体陽性キャリア22例の肝表面像を腹腔鏡的に観察し,無症候性HBe抗原陽性者14例のそれと比較検討した.その結果,肝と周辺臓器との癒着,肝表面の陥凹,および白色紋理の3所見が,HBe抗体陽性群において.HBe抗原陽性群よりも,有意に高率に出現していた.このことは,臨床的に無症状であったHBe抗体陽性者においても,seroconversion時に肝炎が存在したことを形態学的に裏付けたものと考えられる. また,5症例での,肝内HBVDNAの検討により,HBe抗体陽性者3例の全例に組み込み体を認め,これはHBV感染既往のsignと考えられた.