日本消化器内視鏡学会雑誌
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消化管粘膜線溶活性の亢進を認め抗線溶療法が奏効したCronkhite-Canada症候群の1例
坂上 博三木 茂敬水上 祐治細川 鎮史山下 省吾佐々木 達郎太田 康幸
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1990 年 32 巻 1 号 p. 100-104_1

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抄録
 消化管粘膜線溶活性の亢進が認められ,抗線溶療法が奏効したCronkhite-Canada症候群の1例を経験した.症例は59歳,男性.下痢を主訴として来院.胃および大腸のポリポーシス,皮膚色素沈着,頭髪の脱毛,爪甲の萎縮,高度の低蛋白血症を認めた.Fibrin平板を用いて内視鏡下に採取した生検組織の局所線溶を測定したところ,胃,大腸粘膜のいずれにおいても顕著な線溶活性の亢進が認められた.栄養補給に加えて,Camost atmesilate1日600mg経口,Tranexamic acid1日500mg経静脈投与を併用し,約3カ月間で自他覚症状,低蛋白血症が改善し,4~6カ月間で胃,大腸ポリポーシスが消失した.線溶活性は臨床症状の改善とともに低下してゆき,臨床経過に並行した変化を示した. これまでの本邦報告例を検索すると,本症候群の12例に対して抗線溶療法が行われており,8例が軽快,治癒し,4例が無効であった.消化管粘膜線溶活性の検討はほとんどなされておらず,本例は,本症候群における消化管内蛋白漏出機序および治療を考える上で示唆に富む症例と思われた.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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