抄録
65歳男性.秋田県在住,農業・養鶏業自営.鶏肝の生食を好む.食欲不振・全身倦怠感・微熱を主訴として発症.入院時現症では,体温36.9℃,肝1横指触知.血液検査所見では,WBC22,400/mm3(Eosino.70.5%)と好酸球増多あり,γ-globulin(IgE7,500u/ml)の増加,軽度肝障害と血沈・CRPの上昇を認めた.CT・エコー検査では特に所見は無いが,肝シンチ上,多数の欠損像を認めた.腹腔鏡検査では,肝表面凹凸不整で,黄白色結節が散在していた.同結節の狙撃生検により,好酸球高度浸潤を伴った肉芽腫性炎症像,さらに一部中心性壊死を認める肝組織を得た.血清免疫反応により猫蛔虫抗原との強い反応があり,猫蛔虫症と診断した.Thiabend-azole1,500mg3日間投与を数回行った結果,好酸球増多と自覚症状は改善.軽快後のシンチでは欠損像は消失し,肝生検像で好酸球浸潤と肉芽腫性変化は軽減し,グ鞘の線維化を認めた.本例は,本邦6例目のヒト猫蛔虫症例である.