抄録
高ガストリン血症を伴った抗胃壁細胞抗体陽性のA型胃炎に,極めてまれな有茎性カルチノイド1個と多発性微小カルチノイド,および多数の内分泌細胞微小胞巣を合併した1例を報告した. 症例は52歳女性.胃集検にて異常を指摘され,精査目的にて入院.胃体中部より幽門輪に嵌頓した有茎性ポリープを内視鏡的に切除したところカルチノイドであり,他にも複数のカルチノイドを認めたため,胃全摘術を施行した.抗胃壁細胞抗体陽性,無酸症,高ガストリン血症を伴っており,術中採血により幽門領域から高濃度のガストリン分泌を認めた.病理組織学的には幽門腺領域のG細胞は増生し,胃底腺領域では粘膜は萎縮し,粘膜内に内分泌細胞過形成と内分泌細胞微小胞巣の増生,及び多数の微小カルチノイドを認めた.これらより本症例はカルチノイドの発生に示唆を与える症例と考えた.また,本邦における多発性胃カルチノイドを文献的に考察した.