抄録
患者は63歳の男性で嚥下困難を主訴に来院した.食道には門歯より33cmから40cmに全周性の陥凹性病変,胃には胃角部後壁を主体にボルマンII型の腫瘍,大腸には肝彎曲部に扁平な発赤した隆起が存在した.内視鏡的生検で食道は扁平上皮癌,胃と大腸は腺癌と組織学的に診断した. 食道・胃・大腸の消化管だけに発生した三重複癌と診断し,一期的に手術した.患者は術後60日目に不幸な転帰をとった. 最近,重複癌は増加の傾向にあり,日常診療に際して留意する必要がある.本症例は3癌とも消化管に発生した点で稀であると考え報告した.